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【2026】採用DXとは?工程別の施策・進め方・おすすめツールを実務目線で解説

Mio TakahashiMio Takahashi|2025-07-30公開|2026-08-26更新

【2026】採用DXとは?工程別の施策・進め方・おすすめツールを実務目線で解説

採用DXとは、データとデジタル技術を活用して採用業務を効率化するだけでなく、採用プロセスや意思決定、候補者とのコミュニケーションそのものを継続的に改善する取り組みです。

採用管理システム(ATS)を導入したり、面接をオンライン化したりするだけでは、採用DXを実現したとはいえません。重要なのは、「応募が集まらない」「選考に時間がかかる」「候補者が途中で辞退する」「担当者によって説明や評価が異なる」といった課題を特定し、デジタル技術とデータを使って採用プロセス全体を改善することです。

人材獲得競争が続くなか、採用担当者には多くの業務が求められています。その一方で、候補者側は企業から一方的に情報を受け取るだけではなく、「自分に必要な情報を、必要なタイミングで得られるか」という採用体験も重視するようになっています。

本記事では、採用DXの意味から、必要とされる背景、メリット・デメリット、採用工程別の施策とツール、実践的な進め方、候補者体験(CX)の改善方法、KPI、成功事例まで体系的に解説します。

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この記事の内容
  1. 採用DXとは
  2. 採用DXが必要とされる背景
  3. 採用DXのメリット・デメリット
  4. 採用工程別のDX施策とツール
  5. 採用DXを進める5ステップ
  6. 採用DXで候補者体験(CX)を高める
  7. 採用DXで見るべきKPI
  8. 採用DXで失敗しないためのチェックポイント
  9. まとめ
  10. 採用DXに関するよくある質問

採用DXとは

採用DXとは、採用活動にデジタル技術やデータを取り入れ、採用プロセスと候補者体験を変革する取り組みです。ポイントは、「既存業務をデジタルに置き換えること」自体を目的にしないことです。紙で管理していた履歴書をPDFにする、対面面接をWeb面接に変えるといった取り組みも業務改善としては有効ですが、それだけでは従来の採用プロセスそのものは変わりません。

採用DXでは、応募から入社後までのデータを蓄積・分析し、「どこで候補者が離脱しているのか」「どの採用チャネルから活躍人材を獲得できているのか」「どの情報提供が候補者の意思決定を後押ししているのか」を把握します。その結果を、採用要件、選考フロー、候補者コミュニケーション、採用投資などの改善につなげていきます。

つまり、採用DXのゴールはツール導入ではありません。採用活動を「担当者の経験や勘に依存した業務」から、「データをもとに改善を繰り返せる仕組み」へ変えることにあります。

デジタル化・HRテックとの違い

採用DXと混同されやすい言葉に、「デジタル化」と「HRテック」があります。

項目主な目的採用における例
デジタル化アナログ作業をデジタルへ置き換える紙の履歴書をPDF化する、対面面接をWeb面接にする
HRテックテクノロジーで特定の人事・採用業務を支援するATS、適性検査、日程調整、AI面接を導入する
採用DXデータと技術で採用プロセスや意思決定を変革する応募・選考・入社後データを分析し、採用要件や候補者体験を改善する

HRテックは、採用DXを実現するための手段です。採用管理システム(ATS)に候補者情報を集約するだけであれば、採用業務のデジタル化・効率化にとどまります。一方、そのATSに蓄積された応募経路、選考通過率、辞退率、入社後の活躍状況などを分析し、「採用すべき人物像」や「重点投資すべきチャネル」を更新できれば、採用DXへ一歩踏み込んだ状態といえます。

採用DXの成熟度を段階で捉える

採用DXは、最初から高度なAIやデータ分析を導入する必要はありません。自社の現在地を確認し、一段ずつ進めていく方が現場へ定着しやすくなります。

段階状態代表的な取り組み
レベル0手作業・属人管理メール、Excel、個人ファイルで採用管理
レベル1デジタル化Web面接、電子履歴書、クラウド共有
レベル2一元管理・自動化ATS、日程調整、自動連絡
レベル3データ活用選考歩留まり、採用チャネル別ROIの分析
レベル4候補者体験の最適化候補者別の情報提供、動画、AIによるコミュニケーション支援
レベル5経営・人材戦略との連携入社後の活躍データを採用要件や人材戦略へ還元

Excel管理に限界を感じている企業が、いきなり高度なAI分析へ進む必要はありません。まずATSで候補者情報を一元化し、その後にデータ分析やCX改善へ進むなど、自社の採用課題に応じて段階的に取り組むことが重要です。

採用DXが必要とされる背景

採用DXが注目される背景には、人材獲得競争という外部環境の変化と、採用現場が抱える業務負荷という内部環境の変化があります。単純に「新しいツールが増えたからDXする」のではなく、従来の採用方法だけでは、候補者との接点創出から選考、意思決定までを安定して運営しにくくなっていることが大きな理由です。

人材獲得競争の激化と採用業務の複雑化・属人化

日本では長期的な人口減少が続いています。総務省統計局の人口推計では、2026年7月時点の15〜64歳人口は7,342万7千人で、前年同月から12万1千人減少しました。企業が採用対象とする人口の縮小が続くなか、必要な人材を確保するためには、候補者との接点を増やすだけでなく、一つひとつの接点の質を高めることも重要になっています。

出典:総務省統計局「人口推計 ― 2026年(令和8年)7月報 ―」

採用手法も多様化しています。求人媒体だけでなく、人材紹介、ダイレクトリクルーティング、リファラル採用、採用SNS、採用サイト、イベントなど複数のチャネルを併用する企業が増えると、それに伴って候補者情報や選考状況の管理も複雑になります。

採用担当者が少人数の場合、求人作成、スカウト、応募者対応、面接調整、会社説明、評価回収、内定者フォロー、採用データ集計までを同じ担当者が抱えることもあります。情報がExcel、メール、チャット、求人媒体ごとに分散すると、対応漏れや転記ミスが起きやすく、業務が特定の担当者に依存する原因にもなります。

採用業務の属人化について詳しく知りたい方は、「採用の属人化を解消する5つのステップ|経営リスクを回避する標準化とDX」もあわせてご覧ください。採用業務を可視化し、標準化する方法を詳しく解説しています。

候補者体験の重視とAI・データ活用の拡大

採用DXが求められるもう一つの理由が、候補者体験(CX/Candidate Experience)の重要性です。

候補者体験(CX)が採用の成否を左右することは、株式会社LOOVが、新卒・中途で採用選考を受けた250名(新卒100名・中途150名)に実施した調査でも表れています。「面談前に担当者の役割や面談の目的が共有されず、何を話す場か分からなかった」と感じた候補者は62.3%、「カジュアル面談で、知りたい業務内容や組織の状況を十分に得られなかった」は57.4%にのぼりました。

採用担当者が説明したかどうかではなく、候補者が「自分の意思決定に必要な情報を理解できたか」という視点が欠かせません。採用DXの目的は効率化だけでなく、”候補者側の情報不足”をデジタルで解消し、志望度を下げずに選考を前へ進めることにあります。

こうした課題に対し、ATSによるデータ管理など、採用活動で取得できるデータの幅も広がっています。実際に、採用ツールにはAIを使った面接支援や評価、採用データの可視化などの機能が提供されています。ただし、「候補者への返信を早めたい」「説明品質をそろえたい」「辞退の原因を特定したい」といった具体的な採用課題を起点に、必要なツールを選択することが重要です。

候補者体験の考え方や改善方法をさらに詳しく知りたい場合は、「候補者体験(採用CX)とは?向上方法・改善施策・事例をわかりやすく解説」も参考にしてください。

採用DXのメリット・デメリット

採用DXには、採用担当者の工数削減だけでなく、候補者対応の改善や採用品質の向上など複数のメリットがあります。一方で、新しいツールを導入すれば自動的に成果が出るわけではありません。導入コストや現場定着、データ管理、AI利用時のガバナンスなどについても事前に検討する必要があります。

メリット

1. 採用業務を効率化できる

採用DXで成果が表れやすい領域の一つが、繰り返し発生する定型業務です。応募者情報の転記、日程調整、リマインドメール、評価回収、会社説明などを自動化・標準化すれば、採用担当者は候補者との対話や採用戦略の検討といった、人が担う価値の高い業務へ時間を振り向けられます。

採用業務の自動化については、「採用業務の自動化ガイド|メリットから自動化できる範囲、AI活用の成功事例まで」で自動化しやすい業務とAI・動画の活用方法を詳しく解説しています。

2. 候補者体験を向上させられる

応募後の返信や日程調整が遅れる、担当者によって会社説明の内容が異なるといった状態は、候補者にとって不安要素になり、その対応品質が候補者体験(CX)に直接影響します。

応募直後の自動返信やリマインドメールの自動化、日程調整ツールを活用すれば対応速度を安定させられます。また、会社紹介や選考フローの説明を動画やデジタルコンテンツとして整備しておけば、担当者や時間帯に左右されず、一定品質の情報を提供できます。

3. データに基づいて採用施策を改善できる

採用DXでは、採用活動を「応募数が増えた・減った」という結果だけで評価しません。採用経路別の応募数、面談設定率、選考通過率、辞退率、内定承諾率、採用単価などを比較すれば、改善すべき工程が分かります。

応募数が十分なのに面談へ進む候補者が少ないのであれば、さらに広告費を増やすより、応募後の対応や情報提供を改善した方が成果につながる可能性があります。また、選考時の評価データと入社後の定着や活躍データをつなげると、採用判断の再現性も高め、ミスマッチも減らせます。

採用データの分析方法については、「採用分析のやり方完全ガイド|課題特定から改善までデータで導く」で課題特定から改善までの考え方を詳しく紹介しています。

デメリット・注意点

1. 導入時の負荷や現場への定着に抵抗がある

ツール導入時には、初期設定、既存データの移行、社内教育などの工数が発生します。また、その対応も人事部門だけでは完結しません。現場部門の面接官や担当者が、システムに入力しない、使わないといった状態になれば、十分なデータが蓄積されず、従来のスプレッドシートとの二重管理が発生することもあります。

AI面接など、従来のやり方を大きく変えたり、多くの採用工程を一度にデジタル化・自動化しようとすると現場の抵抗が大きくなり、定着しないことがあります。候補者の感情が動く場面(最終面接での見極め、内定者への意思確認など)は人が担い、説明・情報提供のような”繰り返し工程”からデジタルへ置き換えるのが、失敗を避ける現実的な順序です。

2. データが分散・分断され、AI・個人情報に関するガバナンスが必要になる

母集団形成、ATS、面接、内定者フォローなどに別々のサービスを利用すると、候補者データが複数システムに分散する可能性があります。導入時にはAPI連携やCSV出力の可否、データ項目の統一などを確認し、「どのシステムを採用データの基点にするか」を決めておくことが重要です。

また、AIによる候補者評価や要約などを利用する場合、入力する情報、判断に利用する範囲、人による確認方法などを明確にしておく必要があります。

また、生成AIを業務へ導入する際には、機密情報や個人情報の取り扱い、アクセス管理、運用ルールなどのセキュリティ対策が重要になります。IPAが公開している生成AIの導入・運用ガイドラインでも、組織的な運用ルールとリスク管理の必要性が整理されています。

参考:IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)「テキスト生成AIの導入・運用ガイドライン」

採用工程別のDX施策とツール

採用DXを進める際は、どの採用工程にボトルネックがあるかを確認することが重要です。応募数が不足している企業と、応募は集まっているものの面接まで進まない企業では、必要な施策が異なります。

母集団形成/応募・選考管理/日程調整/面接・評価

選考前半では、「候補者を集める」「応募情報を管理する」「スムーズに選考へ進める」「適切に評価する」という一連の流れを整備します。

採用工程主な課題DX施策
母集団形成応募が集まらない、ターゲットへ届かないダイレクトリクルーティング、採用媒体、タレントプール
応募・選考管理情報分散、対応漏れ、進捗が見えないATSによる一元管理・自動連絡
日程調整メール往復が多い、調整に時間がかかるカレンダー連携、自動調整、リマインド
面接・評価評価が属人化する、面接工数が大きいAI面接、面接記録、適性検査、評価データ化

現在は、母集団形成から選考管理、面接、分析までさまざまな採用ツールが提供されています。母集団形成に課題がある場合は、候補者との接点そのものを増やす施策が必要です。一方、応募数が十分にあるにもかかわらず対応漏れが起きている場合は、新しい求人媒体を追加するよりATSの導入を優先した方が合理的です。

面接についても同様です。単純にAI面接を導入するのではなく、「一次面接の件数が多すぎる」「面接官によって質問や評価がばらつく」など、具体的な課題がある工程から導入を検討します。

1. ビズリーチ

ビズリーチ

ビズリーチは、転職意欲が高い人材が登録しているサービスです。ビズリーチの登録会員は、弊社独自の審査を通過した人材のみ。また、転職サービスとしては珍しく有料のプランを提供しており、転職意欲の高い会員の方が多数います。即戦力人材(スカウト可能会員)が登録するデータベースを直接検索して、「欲しい」人材を見つけられます。

参考:https://bizreach.biz/service/bizreach/

2. HERP Hire

HERP Hire

HERP Hireは、デジタル人材採用に必要な、現場巻き込み型の「スクラム採用」のための機能を備えています。だから、ミスマッチがなくなる。「いい人」が採用できる。候補者体験(CX)もよくなる。業務の『効率化』だけでなく、『採用成果の向上』を実現する採用管理システムです。

参考:https://lp.herp.cloud/

3. 調整アポ

調整アポ

調整アポは、スケジュール調整と当日までのフォローアップを自動化するツールです。連携したカレンダーから空き日時が自動でピックアップされ、空き日時一覧が表示された専用URLを送るだけ。相手が好きな日時を選べば、日程調整が完了です。Web会議URLが自動発行され、参加者に共有されます。前日or当日にリマインドメールも自動送信されます。

参考:https://scheduling.receptionist.jp/

4. Track AI Interview

Track AI Interview

AIがWeb面接を実施。録画・要約・スコアレポートを通じて人事の「ES/面接工数の削減」と「評価基準の統一」に貢献し、人事が本来注力したい「候補者と密に向き合う時間」を増やし、採用の質の向上にも貢献します。

参考:https://tracks.run/products/ai-interview/

候補者への情報提供/内定後のフォロー/入社後のデータ連携・活用

選考後半では、企業が候補者を「評価する」だけでなく、候補者が企業を正しく理解して意思決定できる環境を作ることが重要になります。

採用工程主な課題DX施策
候補者への情報提供会社理解が進まない、説明品質がばらつく採用動画、インタラクティブコンテンツ、採用サイト
内定後フォロー内定辞退、不安、情報不足個別コンテンツ、定期連絡、オンデマンド説明
入社後入社前後で情報が切れるオンボーディングのデジタル化
データ活用採用施策の成果が分からないATS・BIによる分析、入社後データとの連携

5. TALKsmith

TALKsmith

Video Agentが24時間365日、候補者ごとに最適化された会社説明を自動で提供します。また、トップ採用担当者のノウハウをAIが再現し候補者の採用体験を向上させます。さらに、候補者の志向性をリアルタイム分析し戦略的な採用を実現します。インタラクティブな採用動画によって、採用担当者は候補者の見極めに集中することができるようになり、優秀な人材獲得の成功率を向上させます。

参考:https://loov-video.com/for-hr/

6. PRaiO

PRaiO

PRaiOは、新卒採用に特化したAI分析ツールです。蓄積された膨大な採用関連データをAIが整理し、採用担当が活用できる状態にします。施策有効性を可視化・分析し、エリア・職種・経路等の様々な選考推移を出力します。今まで定量化できていない学生の意思決定要素を判別する事で、採用計画の効果的な検討材料にできます。※サービス運営会社:マイナビ×三菱総合研究所

参考:https://praio.jp/recruitdata_ai/

7. HRaris

HRaris

HRaris(ホラリス)は、求人媒体やATSなどのデータを統合し、応募単価や選考歩留まり等を可視化するとともに、課題に応じた施策検討やHRソリューションとの出会いを支援する、採用分析×課題解決一体型のプラットフォームです。採用支援に特化したAIと独自のアルゴリズムが、求人媒体、代理店、各種HRサービスを組み合わせ、採用活動を最適化し、確実な成果へつなげます。

参考:https://hraris.com/lp

自社に合うツールの選び方

採用ツールは機能数や知名度ではなく、自社の採用課題との適合性で選ぶ必要があります。

自社の採用課題を起点に選ぶ

まず、「応募が少ない」「日程調整が遅い」「面接評価がばらつく」「説明会に工数がかかる」「内定辞退が多い」など、最も改善したい課題を一つに絞ります。
応募数が少ないのにATSだけを導入しても母集団形成の課題は解消されません。逆に、応募は十分あるものの対応漏れが発生している企業が求人媒体を増やせば、採用担当者の負荷をさらに高める可能性があります。

工数削減効果とコストが見合うか確認する

ツールの月額料金だけではなく、現在発生している業務時間を算出しましょう。日程調整に月30時間かかっているなら、自動化によって何時間削減できるのかを見積もります。会社説明会を月20回実施している場合も、準備・説明・日程調整まで含めた年間工数で考えると投資判断をしやすくなります。

既存システムとの連携性を確認する

採用DXでは、長期的にデータを蓄積できる状態を作ることが重要です。ATS、適性検査、面接ツール、採用動画、人事システムなどを利用する場合、API連携、CSV出力、データ項目、アクセス権限などを確認します。
現在は必要なくても、将来的に「採用経路と入社後活躍を分析したい」と考えた際にデータを取り出せなければ、再度システムを入れ替える必要が出てくるためです。

採用DXを進める5ステップ

採用DXは、一度のシステム導入で完了するプロジェクトではありません。採用課題を特定し、小規模に改善し、その結果をデータで確認しながら対象範囲を広げていくことで、無理なく定着させられます。

1. 経営課題と採用課題を接続する

最初に、「なぜ採用DXを行うのか」を明確にします。「DXを進めたい」「AIを使いたい」といった目的では、導入後の成否を判断できません。事業計画から必要な採用成果へ落とし込むことが重要です。

新規事業を拡大するためにエンジニア20名の採用が必要なのであれば、「応募が不足しているのか」「面接通過率が低いのか」「内定は出せているが承諾されないのか」を分解します。経営課題と採用KPIを接続できれば、どの工程へ投資すべきかを判断しやすくなります。

2. 採用プロセスとデータを可視化する

次に、応募から入社までの採用プロセスを書き出します。各工程について、誰が担当しているか、どのツールを使っているか、どの程度の時間がかかっているか、どのデータが残っているかを確認します。

候補者側の体験も同時に確認しましょう。企業側では「面接日程を調整しているだけ」でも、候補者から見れば「応募から5日間連絡がない」という体験になっている可能性があります。社内業務と候補者体験を重ねて可視化すると、採用成果を妨げているボトルネックを特定しやすくなります。

3. 改善対象とKPIを決める

課題を確認できたら、優先して改善する工程とKPIを決めます。母集団形成なら応募数やスカウト返信率、選考なら面談設定率や選考期間、意向形成なら内定承諾率や候補者理解度などが候補になります。

重要なのは、ツールの利用率ではなく採用成果をKPIにすることです。ATSへ何件入力したかではなく、「応募後の初回対応時間が何時間短縮したか」、採用動画を何本作ったかではなく、「候補者の理解度や面談移行率がどう変化したか」を確認します。

4. 小規模に試して効果を検証する(スモールスタート)

採用DXは、最初から全職種・全部署へ展開する必要はありません。候補者数が多い職種だけで日程調整を自動化する、会社説明会の一部をオンデマンド化する、特定の採用チームだけでATSを試すなど、対象範囲を絞って検証します。

この段階では、成果だけでなく現場の使いやすさも確認します。工数は減ったものの面接官の操作負担が増えていないか、候補者に分かりにくい導線になっていないかをチェックし、問題を修正してから対象範囲を広げることが重要です。

5. 現場展開と継続改善を行う

PoCで効果を確認できたら、運用ルールを整えて展開します。誰がデータを入力するのか、どの項目を必須とするのか、KPIをいつ確認するのか、改善施策の責任者は誰かを明確にします。

採用DXは導入後からが本番です。月次など一定の頻度でKPIを確認し、「日程調整は改善したが面談後辞退が増えている」と分かれば、次は面談内容や情報提供へ改善対象を移します。このようにボトルネックを一つずつ解消することで、採用プロセス全体を継続的に改善できます。

採用DXで候補者体験(CX)を高める

ATSや日程調整によって採用業務を効率化しても、それだけで採用成果が向上するとは限りません。企業が候補者への対応を効率化する一方で、候補者が「この会社で働くイメージを持てない」「選考に必要な情報が分からない」という状態のままであれば、選考辞退や内定辞退の原因になり得ます。そこで、採用DXでは業務効率だけでなく候補者体験(CX)も設計する必要があります。

候補者体験が採用成果を左右する理由

CXとは、候補者が求人情報に触れてから応募、面談、面接、内定、入社に至るまでに経験する一連の体験を指します。企業が十分に説明したつもりでも、候補者が必要な情報を理解できているとは限りません。

株式会社LOOVが、新卒・中途で採用選考を受けた250名に実施した調査では、内定後に「入社後の働き方やキャリアが“自分にとってどう良いか”イメージできないまま意思決定を迫られた」と回答した候補者が60.7%でした。さらに入社後についても、「大量の資料・動画を渡されたが、“今の自分に何が必要か”分からず立ち上がりに負荷を感じた」という回答が59.1%にのぼっています。

情報量を増やすだけでは、候補者体験は改善しません。候補者が「今の段階で何を知る必要があるのか」「次にどの情報を見るべきか」が分かるように、自分のペースで理解できる形に設計し直すことが、CX起点の採用DXの要点です。

動画・インタラクティブコンテンツの活用

候補者への情報提供は、人事側にとっても大きな負担になっています。

株式会社LOOVが人事担当者470名に実施した調査では、「選考説明や会社紹介などの説明・情報提供業務に負担を感じる」と回答した人が82.3%、「伝え方や担当者によって伝わり方に差が出る」と回答した人が89.1%でした。同じ調査で「動画・インタラクティブなコンテンツを使ってみたい業務」を尋ねると、「カジュアル面談・一次面接の代替」が47.2%、「会社紹介・選考説明」が37.6%と上位に挙がっています。

候補者への説明を動画で標準化すれば、担当者ごとの品質差をなくし、候補者は自分の都合のよい時間に確認できます。担当者も毎回同じ内容を説明する必要がなくなり、面談では候補者の経験、価値観、キャリア、疑問点など、対話しなければ分からない内容へ時間を使えるようになります。

ただし、すべてのコミュニケーションを動画で代替せず、選考初期の定型説明を動画へ任せ、候補者ごとのキャリア相談や条件交渉、最終的な意向形成は人が対応するなど、「人が対応すべき領域」と「デジタルで標準化できる領域」を分けることが重要です。

インタラクティブ動画の具体的な活用方法は、「【2026年最新トレンド】インタラクティブ動画を採用で活用する方法|事例・活用シーンも解説」を参考にしてください。

採用プロセス別の活用方法

動画や非同期コンテンツは、会社説明会だけでなく、採用プロセスのさまざまな場面で活用できます。

応募・説明会前

採用サイトや求人ページに会社紹介や社員インタビューを配置すれば、候補者は応募前に仕事内容や組織について理解できます。

株式会社LOOVへ相談する採用担当者からは、「会社説明会は1回あたりの参加人数が限られ、機会損失が大きい」「まず1本だけでも動画を公開して母集団を広げたい」といった声も寄せられています。会社説明・選考フロー案内・社員インタビューを動画化しておけば、説明会に来られない遠方や現職中の候補者にも届けられます。

会社説明動画の作り方などを詳しく解説した関連記事「会社説明動画の活用シーン別事例9選|成果につながる構成・作り方」もぜひ参考にしてください。

面談・面接前

面談の前に事業内容、仕事内容、選考目的などを共有しておけば、候補者は基本情報を理解した状態で面談に参加できます。面談の時間を会社説明で使い切るのではなく、「なぜ転職を考えているのか」「どのような環境で力を発揮できそうか」など、候補者との相互理解に使えるようになります。

選考中

社員インタビューや部署紹介、具体的な仕事内容、キャリアパスなどを候補者の関心に応じて提供します。全候補者へ同じ大量の資料を送るのではなく、エンジニア候補者には開発環境や技術組織、営業候補者には顧客層や営業プロセスなど、意思決定に必要な情報を届ける設計が有効です。

特に社員インタビューは動画コンテンツに最適な情報です。詳しい作り方は関連記事「社員インタビュー動画の事例5選|作り方から質問例・制作のポイントまでわかりやすく解説」を参考にしてください。

内定後・入社前

内定後は、仕事内容、配属組織、入社後の立ち上がり、キャリア、社内制度など、候補者が意思決定するために必要な情報を整理して提供します。さらに、オンボーディング用の説明コンテンツと接続すれば、採用時に伝えていた内容と入社後の情報が分断されにくくなります。

候補者体験(CX)を高めた成功事例

採用DXの価値は、「人の仕事をなくすこと」ではありません。デジタルで代替できる説明や調整を効率化し、人が候補者と向き合うべき場面へ時間を再配分することにあります。ここでは、カジュアル面談の前の会社説明を自動化することで、面談を相互理解を深める場として、CXを向上させた事例を紹介します。

デジタルグリッド株式会社では、エネルギー業界への理解度によって候補者が必要とする説明内容が異なり、一律の情報提供では対応しにくい状況でした。そのため、カジュアル面談1時間のうち約30〜45分を会社説明に費やしており、候補者との対話や相互理解に十分な時間を確保できないことが課題となっていました。

そこでVideo Agent「TALKsmith」を導入し、会社や事業に関する基本的な説明を面談前に確認できる形へ移行。動画の中の選択肢によって、候補者の関心や理解度に応じて必要な情報を届けられる設計にしました。採用担当者側も候補者の視聴状況を事前に把握できるため、面談では、候補者ごとの疑問やキャリア、相互理解に時間を使えるようになりました。

この事例のように、採用DXによる候補者体験の改善では、単に情報提供を自動化するのではなく、候補者が必要な情報を事前に理解できる環境を整え、その分、対話をより有意義なものにするという考え方が重要です。デジタルグリッド株式会社における導入背景や具体的な活用方法は、「導入事例:デジタルグリッド株式会社」で詳しく紹介しています。

採用DXで見るべきKPI

採用DXの成果を測るには、応募数や採用人数だけでは不十分です。採用プロセスのどこを改善したのかに応じてKPIを設定し、「導入前と導入後で何が変わったか」を確認します。

採用工程主なKPI確認したいこと
母集団形成応募数、スカウト返信率、応募単価必要な候補者との接点を作れているか
応募対応初回返信時間、面談設定率応募後に候補者を離脱させていないか
選考選考通過率、辞退率、選考日数選考フローにボトルネックがないか
意向形成内定承諾率、辞退理由企業理解・志望度を高められているか
候補者体験面談目的の事前共有率、候補者理解度、満足度候補者が必要な情報を理解できているか
入社後早期離職率、定着率、活躍状況採用時の期待値と入社後実態が合っているか
生産性採用担当者工数、採用単価投資に対して効率化できているか

特にCXを測る場合、「満足しましたか」という総合評価だけで終わらせないことが重要です。
面談後に「仕事内容を理解できたか」「面談の目的を事前に理解できたか」「次の選考で確認すべきことが分かったか」といった具体的な質問を設ければ、改善すべき情報接点を特定できます。
採用DXの費用対効果を見る際には、削減できた時間を人件費へ換算すると判断しやすくなります。

採用DXによる年間効果 = 削減工数の人件費換算 + 採用コスト削減効果 + 歩留まり改善による効果 − ツール導入・運用費

ただし、すべてを金額に置き換える必要はありません。内定承諾率、候補者満足度、採用担当者が候補者と対話できる時間など、採用品質に関する指標もあわせて評価しましょう。

採用DXで失敗しないためのチェックポイント

採用DXは、「システムを導入したら完了」ではありません。ツール導入前に、以下のポイントを関係者で確認しておきましょう。

  • 採用DXの目的を、具体的な採用KPIまで落とし込めているか
  • 現在の採用プロセスとボトルネックを可視化できているか
  • 人事だけでなく、面接官や現場責任者を巻き込めているか
  • 全社導入前に、小規模なPoCで使いやすさと効果を確認しているか
  • データ入力のルールと管理責任者を決めているか
  • ATSなど既存システムとの連携やデータ出力方法を確認しているか
  • 個人情報の取り扱い、アクセス権限、セキュリティ対応を確認しているか
  • AIを判断に使う場合、人が確認すべき範囲を明確にしているか
  • 導入後にKPIを定期確認する会議・改善プロセスを決めているか
  • 成功した施策を他職種・他部署へ展開できる仕組みがあるか

特に注意したいのが、「ツール導入が目的になること」です。応募数が足りない企業に選考管理ツールを追加しても根本課題は解決しません。内定辞退が課題なのに日程調整だけを効率化しても、候補者が辞退する理由は残ったままです。

採用DXでは、「どの工程に、どの課題があり、その課題をどう改善するためにツールを使うのか」を一貫して説明できる状態にしておくことが重要です。

まとめ

採用DXとは、単にデジタルツールを導入することではなく、データとテクノロジーを活用して採用プロセスや候補者との接点を継続的に改善する取り組みです。重要なのは、自社の採用課題を起点に施策を選ぶことです。母集団形成、応募者対応、面接、内定承諾など、どこにボトルネックがあるかを特定し、適切なツールやデータ活用によって改善していきます。

また、採用DXでは業務効率化だけでなく、候補者体験(CX)の向上も欠かせません。会社説明や選考案内などの定型的な情報提供を動画・非同期コンテンツで標準化すれば、採用担当者は候補者との対話や相互理解により多くの時間を使えるようになります。

まずは改善したい課題を一つに絞り、KPIを設定して小さく検証することが、自社に合った採用DXを進める第一歩です。

採用活動の時間とコスト削減ができる
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CS/髙橋 美緒

Mio Takahashi

2019年に(株)イオレへ新卒入社。人材領域を中心に、求人広告の営業に従事し、新人賞・売上表彰を受賞。その後、(株)サイバーエージェントにてSEMコンサルタントとして人材企業を中心とした採用マーケティング支援を担当。その後、CVCファンド運営や新規事業支援にも携わり、現在は(株)LOOVに参画。FSチームリーダーを経て、現在はHR領域のCSを担当。新卒・中途採用における採用プロセス全体の改善を支援し、Video Agentを活用した「説明業務の自動化」や、採用目標達成に向けたコンサルティング支援を推進。

採用DXに関するよくある質問

予算やリソースが限られる中小企業でも、採用DXは可能ですか?

可能です。むしろ、少人数の採用チームほど、繰り返し発生している業務を一つ削減する効果を実感しやすい場合があります。最初から高額なATSや複数のAIツールを導入する必要はありません。日程調整、候補者への定型メール、会社説明など、毎月多くの時間を使っている業務を特定し、一つだけ自動化するところから始めます。重要なのはDXの規模ではなく、「何時間削減できたか」「面談設定率がどう変わったか」といった成果を確認しながら次の投資を決めることです。

「ITに強い人材」がいません。導入のリーダーは誰が適任ですか?

必ずしもIT専門人材がリーダーである必要はありません。採用DXでは、ツールの技術仕様以上に、「どこで候補者が離脱しているか」「採用担当者が何に時間を取られているか」といった現場課題を理解していることが重要です。そのため、採用実務を理解し、面接官や情報システム部門、経営層などを巻き込める人が推進役に適しています。システム設定などの技術的な部分はベンダーや社内IT部門の支援を受け、採用担当者は「何を改善するか」の設計を主導すると進めやすくなります。

採用DXの成果が出るまで、どのくらいの期間がかかりますか?

成果の種類によって異なります。日程調整や定型連絡の自動化であれば、導入後すぐに削減時間を測定できます。会社説明のオンデマンド化についても、実施回数や説明工数、面談移行率など比較的短期間で確認できる指標があります。一方、「採用品質が向上したか」「採用した人材が入社後に活躍しているか」といった成果には、一定期間のデータ蓄積が必要です。そのため、採用DXでは一つの最終成果だけを待つのではなく、短期では工数や選考スピード、中期では辞退率や内定承諾率、長期では定着・活躍など、時間軸を分けてKPIを設定することをおすすめします。

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