チャーンレートとは?計算式と平均・目安|解約率を下げる5つの施策
|2025-06-24公開|2026-08-06更新
SaaSやサブスクリプション型のビジネスに携わっていると、経営会議やカスタマーサクセスの定例で必ず登場するのが「チャーンレート」です。名前は知っていても、計算式の種類や自社の数値が健全かどうかの判断基準までは曖昧なまま、という担当者は少なくありません。
この記事では、チャーンレートの定義と計算式、外部調査にもとづく平均・目安、LTVとの関係、そして解約率を下げる5つの具体施策までを整理します。読み終える頃には、自社のチャーンレートをどの指標で測り、どこから改善に着手すべきかを判断できる状態を目指します。
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チャーンレートとは?意味と計算式をわかりやすく解説
まず、チャーンレートの基本を定義と計算式の2点から押さえます。用語の意味だけでなく、実務で数値を扱う際につまずきやすい「解約の定義」の注意点までここで確認してください。
チャーンレートの定義
チャーンレート(Churn Rate)とは、一定期間内に自社サービスや製品を解約・利用停止した顧客の割合を指す指標です。日本語では「解約率」「顧客離脱率」「退会率」と訳されます。SaaSやサブスクリプションのように継続課金を前提とするビジネスでは、新規顧客をどれだけ獲得しても、同じペースで既存顧客が離れていけば売上は積み上がりません。
チャーンレートは、その「顧客が離れていくペース」を数値で捉えるための指標であり、ビジネスの健康状態を表します。また、投資判断の材料としても使われる点も見逃せません。チャーンレートが高い企業は将来収益の予測が立てにくく、LTV(顧客生涯価値)も低下しやすいため、経営層や投資家からの評価に直結します。
基本の計算式
もっとも基本的なチャーンレートの計算式は次のとおりです。
チャーンレート(%)= 期間中に解約した顧客数 ÷ 期間開始時の総顧客数 × 100
月初に100社の契約があり、その月のうちに5社が解約した場合、月間チャーンレートは5%になります。計測期間は月次・四半期・年次のいずれでも構いませんが、SaaSでは変化を早く捉えられる月次が基本です。
注意したいのは「解約」の定義です。一時的な契約停止や有料プランから無料プランへのダウングレードを解約に含めるかどうかは企業によって異なります。自社にとっての解約を先に定義しておかないと、数値の推移を正しく比較できません。
チャーンレートの種類【3種類を比較】
チャーンレートは「何を失ったか」の捉え方によって、大きく3種類に分かれます。それぞれ計算式と使いどころを確認します。
1. カスタマーチャーンレート
カスタマーチャーンレートは、一定期間内に解約した「顧客数」の割合を示す指標です。単に「チャーンレート」と言う場合、多くはこの指標を指します。
カスタマーチャーンレート(%)= 期間中に解約した顧客数 ÷ 期間開始時の総顧客数 × 100
月初に1,000社の契約があり、月内に50社が解約すれば5%です。どのフェーズ・どの顧客セグメントで離脱が多いのかを分析する起点になりますが、顧客ごとの契約金額の違いは反映されません。月額1万円の顧客と月額50万円の顧客の解約が、同じ「1件」として扱われる点が弱点です。
2. レベニューチャーンレート
レベニューチャーンレートは、一定期間内に失われた「収益」の割合を示す指標です。MRR(月間経常収益)を分母に取り、金額ベースで離脱のインパクトを測ります。契約金額に大きな差があるビジネスでは、顧客数では見えない損失の「質」を捉えられます。
レベニューチャーンレートには2つの計算方法があります。
グロスレベニューチャーンレート(%)= 期間中に失われたMRR ÷ 期間開始時のMRR × 100
ネットレベニューチャーンレート(%)=(期間中に失われたMRR − 既存顧客からの増収分)÷ 期間開始時のMRR × 100
グロスは解約やダウングレードによる減収のみを見る指標で、ネットはアップセル・クロスセルによる既存顧客からの増収分を差し引いた実質値です。ネットがマイナスになる状態は「ネガティブチャーン」と呼ばれます。解約による減収を既存顧客の増収が上回り、新規顧客を獲得しなくても既存顧客だけで収益が成長する、サブスクリプションビジネスの理想形です。
3. アカウントチャーンレート
アカウントチャーンレートは、一定期間内に解約したアカウント数の割合を示す指標です。
アカウントチャーンレート(%)= 期間中に解約したアカウント数 ÷ 期間開始時の総アカウント数 × 100
カスタマーチャーンレートとの違いは、算出単位が「顧客」か「アカウント」かにあります。1社で複数アカウントを契約している、複数人で1アカウントを共有しているといったケースでは両者は一致しないため、アカウント単位で契約が動くBtoBサービスの離脱把握に向きます。ただし顧客ごとの金額差は反映されないため、レベニューチャーンレートとの併用が前提です。
4. 3種類の違い【比較表】
| 種類 | 測る対象 | 向いている場面 | 弱点 |
|---|---|---|---|
| カスタマーチャーンレート | 顧客数 | 離脱セグメントの特定、CS施策の効果測定 | 契約金額の差を反映できない |
| レベニューチャーンレート | 収益(MRR) | 収益インパクトの把握、経営・投資家報告 | 少数の大口解約で大きく振れる |
| アカウントチャーンレート | アカウント数 | 1顧客が複数アカウントを持つサービス、BtoBの契約単位での把握 | 金額の差を反映できない |
単価が均一に近いビジネスならカスタマーチャーンレートだけでも実態を掴めますが、価格帯が複数あるSaaSでは、カスタマーとレベニューの両方を並行して追うのが基本です。顧客数の解約が多くても低価格帯に集中していれば収益への影響は限定的、という判断はレベニューチャーンレートがなければできません。
チャーンレートの平均・目安
自社の数値を評価するには、比較の物差しが必要です。ここでは公開されている外部ベンチマークの水準、BtoBとBtoCで数値が異なる理由、そのうえで自社の目標値をどう決めるかを順に整理します。
業界・ビジネスモデル別の目安
Recurlyが自社基盤上のサブスクリプション企業を分析した調査によると、サブスクリプションビジネスの平均月次チャーンレートは1〜5%で、4%が一つの目安とされています。業界別に見ると、ソフトウェアやビジネス・プロフェッショナルサービスなどのBtoB領域は平均3.8%、デジタルメディア・消費財・教育などのBtoC領域は平均6.5%と差があります。
出典:Recurly「Churn Rate Benchmarks」
BtoBとBtoCで目安が異なる理由
BtoBのチャーンレートが低くなるのは、導入までに比較検討・稟議・オンボーディングと時間とコストをかける分、長期利用が前提になりやすいためです。業務プロセスにサービスが組み込まれると、乗り換えのスイッチングコストも高くなります。
一方、BtoCの動画配信や消費財サブスクは、契約も解約も数クリックで完結します。価格変動への感度も高く、わずかな値上げが解約の引き金になるケースも珍しくありません。
自社の目標値を設定する考え方
目標値の設定は、外部ベンチマークとの比較よりも「自社の過去との比較」を軸に据えるのが現実的です。具体的な手順は、次の3ステップです。
- 解約の定義(ダウングレード・一時停止を含むか)を固定する
- 同一条件で3〜6か月計測し、自社のベースラインを把握する
- ベースラインからの改善幅と、後述するLTV・CACへの影響から目標を逆算する
業界平均より低くても自社として悪化傾向なら危険信号であり、平均より高くても改善傾向なら施策は機能しています。水準そのものより推移を見ることが、実務では役に立ちます。
チャーンレートがLTVに与える影響
チャーンレートの改善がなぜ経営レベルのインパクトを持つのか。その答えは、LTVとの数式上の関係にあります。2つの式でその構造を確認します。
LTVの算出式とチャーンレートの関係
チャーンレートと並んでSaaSビジネスで重視されるのが、LTV(顧客生涯価値)です。LTVとは、1人の顧客が契約期間を通じて企業にもたらす総収益を意味します。基本的な計算式は次のとおりです。
LTV = ARPU(1顧客あたりの平均月次売上) × 平均継続月数
このうち平均継続月数は、チャーンレートから逆算できます。
平均継続月数 = 1 ÷ 月次チャーンレート
月次チャーンレートが5%なら平均継続月数は20カ月、2%なら50カ月です。チャーンレートを5%から2%へ改善するだけで、理論上のLTVは2.5倍になります。この構造を押さえると、チャーンレートが単なる「解約の記録」ではなく、LTVをコントロールする原動力であることが分かります。
LTVの計算方法や最大化の施策は、LTV(顧客生涯価値)とは?重要視される理由や計算方法、最大化させる施策まで徹底解説!で詳しく扱っています。
チャーンレート1%改善が収益を大きく左右する理由
売上向上というとアップセルや単価に目が向きがちですが、チャーンレートの低下は同等以上のインパクトを持ちます。解約の損失は当月のMRR減少にとどまらず、将来の継続収益と回収前の顧客獲得コスト(CAC)の損失化が同時に起きるためです。
チャーンレートが高いと、事業の健全性を測るLTV ÷ CACの比率も急激に悪化します。逆に1%下げられれば、追加の広告費をかけずに収益構造全体が改善します。LTVを高めたい企業にとって、チャーンレートの改善は最優先の課題です。
チャーンレートが重視される2つの理由
チャーンレートがここまで重視されるようになった背景には、ビジネスモデルの変化と市場環境の変化という2つの流れがあります。
1. SaaS・サブスクリプション市場の拡大
ソフトウェア販売の主流が売り切りのライセンス型からSaaS型へ移行し、企業の売上はMRR・ARRを積み上げる構造に変わりました。このモデルでは「契約して終わり」ではなく「契約後がスタート」です。獲得した顧客が数か月で離れればLTVは伸びず、成長は頭打ちになります。
チャーンレートは、収益の安定性・プロダクトの価値・カスタマーサクセスの実力をまとめて映す指標として、SaaS経営の中心的なKPIに位置づけられるようになりました。
2. 新規顧客獲得コスト(CAC)の上昇
デジタル広告のクリック単価は高騰を続け、購買プロセスの比較検討フェーズも長期化しています。1件の商談をクロージングするまでのコストと時間は増える一方で、新規獲得だけに頼る成長戦略は持続可能性を欠くようになりました。
既存顧客の解約を1件防ぐことは、追加コストをかけずに売上を守ることと同義です。獲得効率が悪化する市場環境こそが、チャーンレート改善を「もっとも費用対効果の高い戦略」に押し上げています。
チャーンレートが高くなる3つの原因
改善に入る前に、顧客が離れていく理由を整理します。チャーンの原因は大きく3つに分類でき、自社がどれに該当するかで打つべき施策が変わります。
1. 品質や機能への不満
もっとも直接的なチャーン要因は、プロダクトの価値に対する不満です。期待していた機能がない、動作が不安定、UIが使いづらい。こうした経験が積み重なると顧客の信頼が崩れ、解約という選択に至ります。
プロダクトそのものに欠陥がなくても発生する「価値を実感できないままの離脱」です。機能は十分でも、使い方が分からない、導入目的が現場に浸透しない。こうした状態が続くと、顧客の中では「期待外れのサービス」として品質不満と同じ扱いになります。
品質への不満といっても、機能そのものの欠陥が解約の引き金になるとは限りません。当社がBtoBツールの導入検討経験者100名に実施した「BtoBツール導入検討プロセス購買体験調査」では、導入後にどの機能・使い方が自社に有効か分からず、ツールを十分に活用できなかった経験を持つ人が62%にのぼりました。
顧客が離れる原因の多くは「機能が悪い」ではなく「価値を実感する前に使いこなせなかった」ことにあり、品質改善とあわせて価値実感までの導線を設計することがチャーン抑制の前提になります。
2. 料金・プランへの不満
価格によるチャーンは、単に「高いからやめる」のではなく「価格と価値のバランス」が崩れたときに発生します。導入当初は満足していても、利用頻度が下がると「この金額を支払う意味があるのか」という疑問が生まれます。
料金プランの複雑さや柔軟性のなさも見逃せない要因です。プランが細かすぎて分かりにくい、利用状況に合わせた変更がしにくい。こうした不便さの積み重ねが、他サービスへの乗り換えを後押しします。
3. 競合・市場環境の変化
自社の努力と無関係にチャーンが増えるケースもあります。競合の革新的な機能や価格での市場参入、特定機能に絞った特化型SaaSの台頭は、部分的な乗り換えを起こしやすくします。データ移行のハードルが下がったことも、解約の心理的障壁を低くしました。
IT予算の削減、合併に伴うツール統一、セキュリティ基準の変更といったマクロ環境の変化も同様です。外部要因は完全には防げませんが、次章の施策で「選ばれ続ける理由」を積み上げておくことが重要となります。
チャーンレートを改善する5つの方法
ここからは、チャーンレートを下げるうえで効果が高い5つの施策を紹介します。いずれも一時的な引き止め策ではなく、前章の原因に対応させた構造的なアプローチです。
1. 製品・サービスを改善する
チャーンレートの最大の抑止力は、顧客に「このサービスは手放せない」と思わせるプロダクトの価値です。バグ修正やパフォーマンス向上といった守りの改善に加え、利用データの分析から攻めの機能追加につなげる視点が求められます。
品質は機能やUIだけを指しません。ドキュメントの充実、動作速度、セキュリティ、エラーメッセージの分かりやすさなど、顧客が安心して使えるかどうかも品質の一部です。
2. 料金プランを見直す
価格への不満はコストそのものより「コストと得られるリターンのバランス」に起因します。利用頻度が低いユーザー向けのミニマムプラン新設、機能を絞ったエントリープランの提供、年額契約を前提としたディスカウント設計などが有効な打ち手です。値下げではなく、提供価値と価格の対応関係を顧客に伝え直すことが見直しの本質です。
3. カスタマーサクセスとヘルススコアを活用する
プロダクトが優れていても、顧客がその価値を体感できなければ解約は防げません。そのギャップを埋めるのがカスタマーサクセスです。問い合わせを待つサポートではなく、定期的なヒアリングやKPI設定の支援、活用提案を通じて成果まで伴走する体制が、継続の理由を作ります。
CS運用の軸として広がっているのが「ヘルススコア」です。ログイン頻度、主要機能の利用率、サポート問い合わせの傾向などを数値化し、スコアが閾値を下回った顧客に先回りでアプローチします。解約の意思が固まってからの引き止めではなく、予兆の段階で手を打つことが、チャーンレートを構造的に下げる近道です。
前述の当社調査では、ツール導入後にサポート情報や活用方法が複数の場所に散在し、探すこと自体が手間だったという回答が40%ありました。つまずいた顧客の全員が問い合わせをしてくれるわけではなく、自力解決の手間を感じたまま静かに利用をやめていくケースがあります。だからこそ、問い合わせを待つのではなく、ログイン頻度や機能利用率などをヘルススコアとして定点観測し、解約の予兆を先回りして検知する体制が有効です。
カスタマーサクセスの体制づくりは、カスタマーサクセスとは?基本からKPI・成功事例・導入メリットまで解説も参考にしてください。
4. オンボーディングを強化する
解約の多くは、導入初期の数か月で決まっています。原因の章で触れた「価値を実感できないままの離脱」は初期に集中し、放置すれば自然解約として表面化します。オンボーディングの目的は「使えるようにする」ことではなく、「使いこなせて成果が出る状態まで導く」こと。操作説明にとどまらず、ユースケースの提示や社内展開の支援まで踏み込む必要があります。
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5. 顧客との継続的な関係を構築する
顧客がサービスをやめる最大の理由は「代替手段があるから」ではなく、「この会社である必要がなくなったから」です。機能・価格以上に問われるのが、信頼とつながりです。ユーザーコミュニティの運営や勉強会の開催、顧客を主役にした成功事例の発信も有効です。「この企業は自分たちを理解してくれている」と感じた顧客は、価格や競合以上に関係性で契約を続けます。
まとめ
チャーンレートは、一定期間内に失った顧客・収益の割合を示す指標であり、SaaS・サブスクリプションビジネスの成長と安定性を左右します。カスタマー/レベニュー/アカウントの3種類を目的に応じて使い分け、外部ベンチマークは物差しに、自社の推移を軸に評価するのが実務の基本です。
原因を品質・価格・外部要因の観点で特定し、ヘルススコアによる予兆検知やオンボーディングの徹底といった施策を積み重ねることが、持続的な収益基盤につながります。まずは自社の解約の定義を固め、ベースラインの計測から始めてみてください。
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チャーンレートに関するよくある質問
Q1. ダウングレードや一時停止はチャーンに含まれますか?
企業によって定義が分かれます。顧客数ベースのカスタマーチャーンレートでは含めない企業が多い一方、収益ベースのレベニューチャーンレートではダウングレードによる減収分を含めるのが一般的です。どちらを選ぶかより、定義を固定して同一条件で計測し続けることが大切です。
Q2. ネガティブチャーンとは何ですか?
既存顧客からの増収が解約・ダウングレードによる減収を上回り、ネットレベニューチャーンレートがマイナスになる状態です。詳しくは本記事の「レベニューチャーンレート」の章で解説しています。
Q3. 月次と年次はどちらで管理すべきですか?
SaaSでは変化を早く検知できる月次が基本です。ただし顧客数が少なく1件の解約で数値が大きく振れる場合や、年間契約が中心の場合は、四半期や年次のほうが実態を反映します。自社の契約形態と顧客数に合わせて期間を選び、以降は同じ期間で継続計測してください。


