カスタマーエクスペリエンス(CX)とは?CS・UXとの違いと4つのステップ
|2025-06-24公開|2026-08-20更新
価格や機能だけでは選ばれにくくなり、「顧客にどんな体験を提供するか」が問われるようになりました。特にBtoBでは、商談前後の情報提供や説明の質が、そのまま発注先の評価を左右します。本記事では、CXの定義とCS・UXとの違い、向上の手順を整理し、自社調査と改善事例をもとにBtoBならではのCXの捉え方まで解説します。
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CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?
CXとは、商品・サービスの購入前から購入・利用・購入後までの一連の顧客接点で、顧客が得る体験の総体を指します。この章では、CXの定義と2つの構成要素、そしてBtoBで体験が問われる接点を整理します。
CXの定義
CX(Customer Experience)は日本語で「顧客体験」と訳され、製品やサービスそのものの品質だけでなく、問い合わせ対応、購入の利便性、アフターサポート、Webサイトの使いやすさまで、顧客が企業と接するあらゆる場面を対象とします。
CXには2つの特性があります。1つは「主観性」で、同じ対応でも顧客によって評価が分かれる点です。もう1つは「継続性」で、単発の接点ではなく時系列に連なる体験の積み重ねで形成されます。そのため、CXは一度の施策で完結せず、継続的な観察と改善が欠かせません。
CXを構成する2つの価値|合理的価値と感情的価値
CXは、機能・性能・価格といった「合理的価値」と、購入・利用・フォローの過程で顧客が感じる「感情的価値」の2つで構成されます。合理的価値は各社で差がつきにくくなっており、感情的価値を上乗せすることで顧客が受け取る価値全体を押し上げ、差別化につなげる考え方です。
同じスペックの製品でも、購入時にスムーズなサポートを受けられた場合と、たらい回しにされた場合とでは評価が変わります。この差を生むのが感情的価値であり、CXが重視される理由の中心にあります。
BtoBにおけるCXの3つの接点|商談前・商談中・導入後
BtoBのCXは、購入後のサポートだけでなく「商談前・商談中・導入後」の一連の接点で問われます。対面の前後にある「情報接点」の体験が、そのまま発注先の評価につながるためです。
当社(株式会社LOOV)がBtoBツールの導入検討経験者100名に実施した調査では、「Webサイトや資料だけでは判断材料が不足し、商談しなければ情報が得られなかった」と答えた人が90%にのぼりました。また「個別商談なのにWebサイトや資料と同じ説明が大半だった」も62%を占めています。
商談前に十分な情報が得られず、商談中でも定型的な説明が繰り返される状態は、それ自体がCXの低下を招きます。
CX・CS・UXの違い
CXを正確に理解するには、混同されやすいCS・UXとの違いを押さえる必要があります。3つは対象範囲と評価軸が異なります。
CX・CS・UXの違いが分かる比較表
| 用語 | 対象範囲 | 評価する軸 | 時間軸 |
|---|---|---|---|
| CX(顧客体験) | 認知・購入前から利用・購入後まで全接点 | 体験全体の価値 | 継続的・総合的 |
| CS(顧客満足度) | 個別の製品・サービスへの反応 | 期待に対する満足の結果 | その瞬間 |
| UX(ユーザー体験) | デジタル製品の使用中 | 使いやすさ・操作性 | 使用中 |
CS(顧客満足度)との違い|対象となる体験の範囲
CS(Customer Satisfaction)は、特定の製品やサービスに顧客がどれだけ満足したかという「結果」を測る指標で、アンケートやNPSで数値化されます。CXは満足という結果だけでなく、そこに至るまでの一連の体験を対象とする点が異なります。
なお「CS」には、顧客満足度(Satisfaction)とは別に、顧客の成果創出を継続支援するカスタマーサクセス(Success)の意味もあります。両者は目的が異なるため、文脈での区別が必要です。カスタマーサクセスについては、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:カスタマーサクセスとは?基本からKPI・成功事例・導入メリットまで解説
UX(ユーザーエクスペリエンス)との違い|対象となる接点
UX(User Experience)は、WebサイトやアプリなどデジタルプロダクトのUIや操作性に焦点を当てた概念で、評価の範囲は基本的に「使用中」に限られます。CXはUXを含むより広い枠組みで、導入時の営業対応や契約後のサポートなど、使用前後の接点も評価に含めます。UXが良くても他の接点が悪ければ、CX全体は低下します。
CXが重要視される3つの背景
CXが注目される背景には、市場環境と顧客行動の変化があります。ここでは3つの背景を整理します。
1. 機能や価格だけでは差別化が難しくなっている
情報が簡単に手に入るようになり、製品やサービスのスペックだけで差別化することが難しくなりました。一定以上の品質はどの企業も備えているため、体験の質が選定の決め手になる場面が増えています。
2. SNSの普及で顧客の発信力が高まっている
顧客はレビューサイトやSNSで体験を即座に共有できるようになりました。良い体験は信頼を高める一方、悪い体験は拡散しやすく、CXはマーケティングだけでなくリスク管理の観点からも無視できない要素になっています。
3. BtoBの購買プロセスが複雑化している
買い手が自分で情報を集め比較する時代には、一つひとつの接点の体験が選定を左右します。前掲の当社調査(BtoBツール導入検討経験者100名)でも、日程調整の案内だけが送られ、商談の目的や事前準備の案内がないまま進むことに不安を感じたという回答が82%にのぼりました。
見送りを伝えた後も検討状況を踏まえない画一的な営業メールが届くことにストレスを感じる、という声も少なくありません。商談前後の情報接点が整っていないこと自体が、選定段階でのCXを損なっています。
CX向上が企業にもたらす4つのメリット
CXの向上は顧客満足だけでなく、業績に直結するメリットをもたらします。ここでは代表的な4つを、それぞれ関連記事とあわせて整理します。
1. 顧客離れを防ぎ継続率を高められる
継続的なフォローや利用状況の可視化といった体験の積み重ねが、多少の不満があっても取引を続ける判断を後押しします。顧客が離れる理由は機能やコストよりも、対応への不信感や期待とのギャップであることが多く、CXの改善はこうした見えにくい不満を取り除く手段になります。
2. リピートやアップセルによってLTVを高められる
良質な体験は再取引の動機となり、アップセルやクロスセルを通じてLTV(顧客生涯価値)の最大化につながります。価格だけで比較されにくくなり、値引きに頼らず売上を維持する基盤ができます。LTVの計算方法や最大化施策については、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:LTV(顧客生涯価値)とは?重要視される理由や計算方法、最大化させる施策まで徹底解説!
3. 良好な口コミによってブランドイメージが向上する
顧客が感じた体験は「この企業はどんな価値観で動いているか」というメッセージとして市場に広がります。BtoBでも、担当者が感じた印象は次回の発注先選定や社内の他部門への紹介に影響します。
4. 顧客ロイヤルティを高めて競合との差別化につながる
体験の質が高まると、「他社を選ぶ理由がない」と感じてもらえる状態、すなわち顧客ロイヤルティが育ちます。担当者の異動後も取引が続くケースは、CXが長期的な営業資産として機能している例です。ロイヤルティの高い顧客の育成については、以下の記事で詳しく解説しています。
参考:ロイヤルカスタマーとは|見極める3つの指標と育成4ステップを解説
CXを向上させる4つのステップ
CX改善は、顧客理解から施策の見直しまでを一連のサイクルで回します。ここでは実践すべき4つのステップを解説します。
1. 顧客の声や行動データを収集・分析する
問い合わせ内容、アンケート、営業やサポートでの会話など、あらゆる接点の声を体系的に集めて分析します。CRMなどで蓄積し、改善アクションに落とし込む仕組みがなければ、声を集めても体験は変わりません。BtoBでは現場担当者と決裁者で期待する価値が異なるため、双方からの収集が必要です。
2. ペルソナとカスタマージャーニーマップを作成する
理想的な顧客像をペルソナとして具体化し、認知・情報収集・比較検討・導入・運用の各段階を時系列で整理します。各段階で顧客が何を期待し、どこで不安を感じるかを洗い出すことで、改善すべき接点が明確になります。営業・サポート・開発の認識差を可視化できる点もメリットです。
3. 顧客ごとに最適な施策を設計・実行する
一律の対応ではなく、フェーズや属性に応じた最適な対応を設計します。導入初期にはオンボーディング支援、長期利用顧客には活用事例の提供など、相手の状況に合わせることで「自分のために用意された情報だ」と感じてもらえます。MAツールの活用で、精度の高いパーソナライズが可能になります。
4. 効果測定とフィードバックをもとに改善する
CXは一度改善して終わりではなく、市場やニーズの変化に合わせて更新し続ける必要があります。NPS調査の結果を分析し、スコアが低下した原因を部門横断で共有・改善するサイクルを整えます。自由記述など数値化しにくい声を丁寧に読むことで、「スコアは高いのに解約される」といった見えにくい問題を防げます。
BtoB企業のCX向上事例
CX改善は抽象論になりがちですが、具体的な接点の見直しが成果につながった事例があります。ここでは商談前の情報接点の体験を改善した事例を紹介します。
EC支援サービスを手がけるNowYouSee株式会社では、商談アポ獲得後の顧客がサービス内容を十分に理解できないまま当日を迎え、未通(アポ不通)が発生しやすい点が課題でした。同社はアポ獲得直後の案内メールに、視聴者の関心に応じて説明が変化するプレゼン動画を添付。商談前の情報接点の体験を見直した結果、商談アポの未通率が44%から32%へ改善し、アポ獲得件数も月30件の増加につながっています。
参考:商談アポの未通率が44%から32%に改善し、アポ獲得件数も月30件増加。EC支援サービスが実現した営業プロセス改革
Video Agent「TALKsmith」は、営業資料やプレゼン資料をもとに、AIが説明やプレゼンテーションを24時間自動で行うサービスです。視聴者の質問や関心に応じて案内する内容が変化し、視聴データも取得できるため、商談前後の情報提供という顧客接点の体験改善に活用できます。TALKsmithについて詳しく知りたい方は、以下のサービス資料をご覧ください。
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CX向上を推進する運用体制づくりの2つのポイント
CXは複数の部門が関わる顧客接点で決まるため、一部門に任せるのではなく全社で取り組む必要があります。ここでは体制づくりの要点を解説します。
1. 部門横断のCX推進チームを設置する
営業、マーケティング、カスタマーサポート、開発などの代表者を集め、顧客視点で課題解決と体験設計を行うチームを設けます。営業の初回対応が良くても請求部門のミスがあれば印象は崩れるため、接点をまたいだ一貫性を担保する体制が欠かせません。
2. NPSや解約率などの共通KPIを設定する
部門をまたぐ共通の指標を設定すると、連携への意識が高まります。NPS、解約率、問い合わせ対応時間などを共通KPIとして持つことで、各部門が同じゴールに向かって動けるようになります。
まとめ
CXは単なる満足度ではなく、顧客と企業のすべての接点で形成される体験そのものです。BtoBでは、商談前・商談中・導入後といった情報接点の体験が発注先の評価を左右します。CS・UXとの違いを押さえ、顧客理解から施策見直しまでのステップを回しながら、部門横断の体制で一貫した体験を届けることが、競争力につながります。
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CXに関するよくある質問
Q1. CXは何の略ですか?CXMとの違いは?
CXはCustomer Experience(顧客体験)の略です。CXM(Customer Experience Management:顧客体験管理)は、そのCXを設計・改善していく取り組みや仕組みを指します。CXが「体験そのもの」を指すのに対し、CXMは「体験をマネジメントする活動」を指す点が異なります。
Q2. CX向上はどの部署が主導すべきですか?
特定の一部署ではなく、部門横断で推進するのが基本です。顧客接点は営業・マーケティング・カスタマーサポートなど複数部門にまたがるため、代表者を集めた推進チームを設け、共通KPIで連携する形が現実的です。マーケティングやCS部門が事務局を担い、全社を巻き込む進め方が多く採られます。
Q3. CXの効果測定にはどのような指標を使いますか?
代表的な指標にNPS(顧客推奨度)、CSAT(顧客満足度)、解約率(チャーンレート)、LTV(顧客生涯価値)があります。単一指標で判断せず、体験の段階ごとに複数の指標を組み合わせて測ると、どの接点に課題があるかを特定しやすくなります。


