カスタマーサクセスのオンボーディングとは?進め方を5ステップで解説
|2025-06-04公開|2026-08-07更新
サブスクリプション型のSaaSビジネスでは、契約の獲得よりも「契約後に使いこなしてもらうこと」が収益を左右します。その最初の関門がオンボーディングです。導入直後につまずいた顧客は製品価値を実感できないまま解約に至りやすく、カスタマーサクセス(CS)担当者にとって最も優先度の高い業務の一つといえます。
本記事では、カスタマーサクセスにおけるオンボーディングの定義と位置づけ、ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチの使い分け、KGI・KPI設定を含む実施5ステップ、少人数のCS組織でも実行できる施策例までを解説します。
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オンボーディングとは|カスタマーサクセスで重要な理由と進め方
まず、カスタマーサクセスの文脈でオンボーディングが何を指すのか、CS活動全体のどこに位置づくのかを整理します。
カスタマーサクセスにおけるオンボーディングとは
カスタマーサクセスにおけるオンボーディングとは、新規顧客がサービスをスムーズに使い始め、自らの手で価値を引き出せる「自走」状態まで導く支援プロセスです。初期設定のサポート、操作方法のレクチャー、活用例の案内などを通じて、導入直後の顧客を成功体験へ最短距離で導きます。
もともとは船や飛行機に乗り込む「on board」に由来する言葉で、人事領域では新入社員の受け入れ施策を指しますが、カスタマーサクセスでの対象はあくまで顧客です。
関連記事:カスタマーサクセスとは?カスタマーサポートとの違いと5つのKPI・成功事例を解説
顧客ライフサイクルでの位置づけとアダプションとの違い
カスタマーサクセスでは、顧客との関係を「導入期→活用期→拡大期」といったフェーズで管理します。オンボーディングはこの導入期を担う、CS活動全体の起点です。
| フェーズ | 概要 |
|---|---|
| オンボーディング | 導入直後の顧客が使い方を理解し、自走できるまで支援する |
| アダプション | サービスの定着を図り、日常業務への浸透を促す |
| エクスパンション | アップセル・クロスセルにより契約を拡大する |
混同されやすいアダプションは、オンボーディング完了後に「定着」を図るフェーズです。オンボーディングでの立ち上がりに失敗すると後続フェーズには進めないため、最初の設計がその後の成果を大きく左右します。
カスタマーサクセスでオンボーディングが重要な3つの理由
オンボーディングが単なる導入サポートではなく、事業の収益構造に直結する取り組みである理由を3つ整理します。
1. LTV(顧客生涯価値)の最大化につながる
SaaSをはじめとするサブスクリプション型ビジネスは、継続課金で収益を積み上げるモデルです。収益の総量を決めるLTVは利用期間に比例するため、顧客に長く使い続けてもらうことが前提になります。その利用期間の長さを最初に左右するのがオンボーディングです。導入初期に価値を実感できた顧客は継続しやすく、逆に立ち上がりでつまずいた顧客のLTVは伸びません。
関連記事:LTV(顧客生涯価値)とは?重要視される理由や計算方法、最大化させる施策まで徹底解説!
2. 導入初期のチャーン(解約)を防ぐ
いつでも解約できるSaaSでは、「契約したものの使いこなせない」という理由だけで早期解約が発生します。オンボーディングは、この解約リスクが最も高い導入期を集中的に支援する取り組みです。
実際、当社(株式会社LOOV)がBtoBツールの導入検討経験者100名に実施した「購買体験調査」では、「導入後にどの機能・使い方が有効か分からず、十分に活用できなかった」と答えた人が62.0%、「サポート情報や活用方法が複数箇所に散在し、探すこと自体が手間だった」と答えた人が40.0%にのぼりました。
導入後に「使いこなせない」状態が放置されることは、そのまま解約の予備軍になります。オンボーディングは、この立ち上がりのつまずきを防ぐ役割を担います。
関連記事:チャーンレートとは?計算式と平均・目安|解約率を下げる5つの施策
3. アップセル・クロスセルにつながる
オンボーディングを通じて基本機能を使いこなせるようになった顧客は、「もっとこうしたい」という次のニーズを持ちます。上位プランへのアップセルや、関連機能のクロスセルを提案できるのはこの状態になってからです。つまりオンボーディングは、解約を防ぐ守りの施策であると同時に、顧客単価を高める土台でもあります。
オンボーディングの3つのタッチモデル
すべての顧客に同じ濃度の支援を提供することは、リソース的に現実的ではありません。カスタマーサクセスでは、想定LTVに応じて顧客をセグメント分けし、3つのタッチモデルを使い分けます。
1. ハイタッチ|専任担当が個別に支援する
ハイタッチは、大きなLTVが見込める重要顧客に対し、専任担当者が1対1で伴走するモデルです。キックオフミーティングの実施、導入計画の個別設計、定例会でのフォローなど、手厚い支援で確実な立ち上げを実現します。支援の質は最も高い一方、1社あたりのコストも大きいため、対象は絞り込む必要があります。
関連記事:カスタマーサクセスのハイタッチとは?成果を出すための3つの判断軸と設計ステップ
2. ロータッチ|セミナーや勉強会で複数顧客を支援する
ロータッチは、中間層の顧客に対して1対多数で支援するモデルです。導入セミナーや操作説明会、ウェビナーの開催が代表的な施策で、1回の実施で複数社のオンボーディングを進められます。ハイタッチほどのコストをかけずに人的な接点を残せるため、「完全な自動対応では不安が残る」層との相性が良い手法です。
3. テックタッチ|動画・ガイドで自動支援する
テックタッチは、動画やチュートリアル、FAQ、操作ガイドなどのテクノロジーで顧客を支援するモデルです。人が介在しないため、顧客数が増えても品質を落とさず支援できます。少人数のCS組織にとっては、繰り返し発生する説明業務をテックタッチに載せ替えられるかが、オンボーディング体制を維持できるかの分かれ目になります。
オンボーディングを進める5ステップ
ここからは、オンボーディングを設計から改善まで回すための手順を5つのステップで解説します。
ステップ1. オンボーディングの目標を設定する
最初に「顧客がどの状態になったらオンボーディング完了か」を定義します。「初期設定を終え、主要機能で最初のレポートを出力できた状態」のように、顧客の行動で判定できる形にするのがポイントです。ゴールが曖昧なまま進めると支援内容も期間も定まらないため、初回ヒアリングやキックオフで顧客の期待値とすり合わせておきます。
ステップ2. KGI・KPIを設定する
ゴールを定量的に追うため、最終目標のKGIと中間指標のKPIを設定します。KGIにはチャーンレートやLTV、オンボーディング完了率など、収益に直結する指標を置きます。
KPIの代表例は「オンボーディング完了率」と「完了までの時間」です。完了率は「初期設定を終えたユーザーの割合」など顧客の行動で、完了時間は「全ユーザーが初期設定を終えるまでの日数」などで測定します。指標があることで、施策の効果検証と改善が可能になります。
ステップ3. タッチモデルを選び実施計画を作成する
顧客セグメントごとに適用するタッチモデルを決め、具体的な支援プログラムに落とし込みます。初期設定の代行範囲、トレーニングの回数と形式、フォローアップのタイミングを、顧客の業種・規模・リテラシーに合わせて設計します。
対応漏れを防ぐには、チェックリストの活用が有効です。「ゴールの共有」「初期設定ガイドの提供」「トレーニング日程の設定」「問い合わせ窓口の案内」「初回フォローアップの日程確定」といった項目を定型化しておくと、担当者による品質のばらつきを抑えられます。
ステップ4. オンボーディングを実施し進捗を確認する
プログラムに沿って支援を実施します。一方的な説明で終わらせず、顧客の理解度と進捗を確認しながら進めることがポイントです。利用開始から一定期間が経過したタイミングでは、「設定後にうまく活用できているか」「困っていることはないか」をヒアリングします。疑問を抱えたまま放置された顧客は静かに離脱していくため、企業側からの能動的なフォローが継続利用を左右します。
ステップ5. 効果を検証し改善する
一連の支援が完了したら、ステップ2で定めたKGI・KPIの達成度を確認します。目標期間内に完了できなかった場合は、指標設定・プログラム内容・タッチモデルの選定のどこに原因があったかを切り分けます。
顧客からの「理解に時間がかかった」「資料が分かりづらかった」といったフィードバックも改善材料です。オンボーディングは一度作って終わりではなく、実施のたびに精度を上げていく前提で運用します。
オンボーディングを成功させる3つのポイント
手順どおりに実施するだけでなく、顧客の不安に寄り添う工夫がオンボーディングの成否を分けます。押さえるべきポイントは次の3つです。
1. 顧客に合わせたサポート体制を整える
導入直後の顧客は、些細な疑問でも解決できないとサービスへの信頼を失います。専任担当の配置、チャットサポート、FAQページなど、顧客がいつでも相談できる窓口を整えておくことで、初期のつまずきを最小化できます。
2. スモールステップで成功体験を積み重ねる
一度に多くの情報を渡すと、顧客は消化しきれず混乱します。「まずログインと初期設定」「次に主要機能の操作」「最後に活用例」のように、タスクを小さく区切って一つずつクリアしてもらう設計が効果的です。達成体験を積み重ねることで、顧客の学習意欲も維持しやすくなります。
3. 継続的なコミュニケーションを行う
定期的なミーティングやヒアリングで顧客の状況を把握し、先回りした提案につなげます。ユーザー同士が交流できるコミュニティや、よくある質問をまとめたナレッジベースの整備も、顧客との接点を増やす手段です。接点の量は信頼関係に直結し、解約の予兆を早期に察知することにもつながります。
オンボーディングで実施したい6つの施策
当社が業種を横断して222名に実施した調査では、日常的に「同じ説明を複数人に繰り返す」相手として既存顧客への対応を挙げた人が62.0%にのぼり、「説明を自動化するAIツールを使ってみたい」という回答も75.7%に達しました。オンボーディングで毎回発生する製品説明を動画やガイドに載せ替える(テックタッチ化する)ことは、少人数のCS組織でも支援の品質を保ちながら担当者の工数を空けられる、現実的な打ち手です。代表的な施策を以下に整理します。
| 施策 | 概要 | 向いているタッチモデル |
|---|---|---|
| ウェルカムメールの送付 | 契約直後に基本情報・ガイドへのリンクを届け、スタートを切りやすくする | テックタッチ |
| キックオフミーティングの実施 | 顧客の目標と導入の流れをすり合わせ、支援体制を説明する | ハイタッチ/ロータッチ |
| 専用資料・動画の提供 | 操作ガイドや解説動画を提供し、顧客がいつでも自己解決できるようにする | テックタッチ |
| 進捗に応じたステップメール配信 | 「初期設定完了→次はこの機能」と段階的に次のアクションを案内する | テックタッチ |
| 利用状況のモニタリングとリマインド | 未使用機能や停滞を検知し、活用を促すメッセージを送る | テックタッチ |
| 定期的なフォローアップ | 1か月後・3か月後などの節目に利用状況と新たなニーズを確認する | ハイタッチ/ロータッチ |
6施策のうち4つはテックタッチで自動化できる領域です。特に説明系のコンテンツは、一度作れば顧客数が増えても追加コストがかからないため、優先的に整備する価値があります。
関連記事:伝わるチュートリアル動画の作り方3ステップ|内製化を成功させるコツも解説
関連記事:動画マニュアルの作り方完全ガイド|最新の活用事例と成果を出す運用法
オンボーディングを効率化するツール3選
テックタッチ化を進めるうえで有効なツールを3つ紹介します。自社の顧客層とつまずきポイントに合わせて選定してください。
1. TALKsmith

Video Agent「TALKsmith」は、営業資料やサービス資料をもとに、AIが説明やプレゼンテーションを24時間自動で行うサービスです。一方通行の動画とは異なり、視聴者の質問や関心に応じて説明内容がリアルタイムに変化するため、顧客ごとに最適化されたオンボーディング体験を自動で提供できます。
視聴データや回答内容もリアルタイムで取得できるため、「どの機能に関心があるか」「どこでつまずいているか」を把握したうえで、必要な顧客にだけハイタッチ支援を差し込む運用が可能です。同じ説明を繰り返すミーティングの削減と、支援品質の均一化を同時に実現します。
実際に、SaaS型サービスを提供する株式会社アイアットOECでは、既存顧客への活用促進・アップセル案内にTALKsmithを活用し、メール配信時と比較して1回の配信から生まれる案件数が2倍に増加、視聴した顧客の成約リードタイムは約半分に短縮しています。
参考:TALKsmith導入でアップセル創出数が2倍に成約リードタイムも1/2へ
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2. Onboarding

株式会社STANDSが提供する「Onboarding」は、ノーコードでUI/UXの改善を実現するプラットフォームです。エンジニアのリソースを使わずに、サービス画面上へガイドやポップアップを設置でき、ユーザーが自分で使い方を習得するセルフオンボーディングを支援します。
3. テックタッチ

「テックタッチ」は、Webシステムやサイト上に操作ガイドやナビゲーションを直接表示し、ユーザビリティを高めるDAP(デジタルアダプションプラットフォーム)です。画面上に表示されるステップごとの操作ガイドや、入力ルールを示すツールチップにより、初めてのユーザーでもマニュアルレスで迷わずシステムを活用できます。
まとめ
カスタマーサクセスにおけるオンボーディングは、顧客が自走できる状態まで導く、CS活動全体の起点となるプロセスです。導入直後の体験がLTV・チャーンレート・アップセルのすべてに波及するため、感覚ではなく設計で取り組む必要があります。
進め方はシンプルです。まず完了条件を定義し、KGI・KPIを置き、顧客セグメントに合わせてハイタッチ・ロータッチ・テックタッチを使い分ける。そして実施のたびに指標で振り返り、プログラムを磨いていく。この繰り返しが、解約されない顧客基盤をつくります。リソースが限られる組織ほど、繰り返しの説明業務をテックタッチに載せ替えることから始めてみてください。
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オンボーディングに関するよくある質問
Q1. オンボーディングの期間はどれくらいですか?
サービスの複雑さや契約形態によって異なるため、一律の正解はありません。「初期設定を終え、主要機能で最初の成果を確認できた状態」のように完了条件を先に定義し、そこから逆算して期間を設定するのが基本です。期間が延びるほど解約リスクは高まるため、完了までの時間そのものをKPIとして計測・短縮していくことをおすすめします。
Q2. オンボーディングは誰が担当しますか?カスタマーサポートとの違いは?
一般的にはカスタマーサクセス部門が担当します。カスタマーサポートが顧客からの問い合わせに応じる受動的な役割であるのに対し、オンボーディングは企業側から先回りして働きかけ、顧客を成功状態まで導く点が異なります。顧客数が増えてきた組織では、オンボーディング専任チームを分ける体制も選択肢になります。
Q3. 少人数のカスタマーサクセス組織でも実施できますか?
実施できます。ポイントは、全顧客にハイタッチ対応をしようとしないことです。繰り返し発生する説明を動画・ガイド・FAQなどのテックタッチで対応し、人の対応は重要顧客とつまずきが検知された顧客に絞ります。支援の総量を人数ではなく仕組みで担保する設計が、少人数運用の前提になります。
Q4. 人事・採用のオンボーディングとの違いは何ですか?
対象が異なります。人事領域のオンボーディングは新入社員が組織に定着するための受け入れ施策を指し、カスタマーサクセスのオンボーディングは顧客がサービスに定着するための支援を指します。語源は同じですが、設計する側の部門も指標もまったく別のものです。


